アメリカザリガニはカエル類の卵や幼生を捕食する!~条件付特定外来生物に指定された本種の駆除の必要性を新たな視点から指摘~
◆発表のポイント
- アメリカザリガニは、2023年6月に環境省と農林水産省により「条件付特定外来生物」に指定されており、本種の定着後に在来種が地域絶滅する例が、国内外の各地で確認されています。
- アメリカザリガニの侵入後に、カエル類が絶滅または減少することが指摘されてきましたが、その詳しい理由は不明でした。
- アメリカザリガニとニホンアカガエルの卵または幼生を24時間同居させる水槽実験を実施した結果、ザリガニによる卵と幼生に対する強い捕食圧が確認されました。
- 絶滅危惧種を含む在来カエル類の保全においては、アメリカザリガニの侵入防止や駆除対策が非常に重要になると考えられます。
岡山大学大学院環境生命科学研究科のQuang-Tuong Luong大学院生(当時。現ベトナムNguyen Tat Thanh大学 講師)、学術研究院環境生命自然科学学域(工)の中田和義教授(保全生態学)と勝原光希助教(植物生態学)の研究グループは、アメリカザリガニによるニホンアカガエルに対する捕食に関する新知見を明らかにしました。本研究の成果は、2024年10月26日に米国の国際学術誌「Journal of Crustacean Biology」の電子版に掲載されました。
日本においてアメリカザリガニは、身近な生き物として認識されがちですが、近年までに在来生物に対するさまざまな悪影響が明らかとなってきました。さまざまな動植物種において、アメリカザリガニの侵入・定着後に個体数が減少したり、地域絶滅したりする事例が報告されていますが、カエル類をはじめとする両生類でも同様の例が確認されています。例えば、岡山県内の絶滅危惧種ナゴヤダルマガエルの生息地でも、アメリカザリガニが定着して増殖した後に、ナゴヤダルマガエルの個体数が減少することが指摘されています。しかし、アメリカザリガニの侵入後にカエル類の個体数が減少する理由の詳細は、これまで十分に検討されていませんでした。
研究グループは、カエル類が減少または地域絶滅する一因について、「アメリカザリガニがカエル類の卵や幼生(オタマジャクシ)を積極的に捕食する」ことにあると予測し、複数の都府県のレッドデータブックにおいて絶滅危惧種等に選定されているニホンアカガエルを対象とし、その卵や幼生とアメリカザリガニを24時間同居させる水槽実験を実施しました。その結果、アメリカザリガニによるニホンアカガエルの卵・幼生に対する強い捕食圧が確認されました。また、ニホンアカガエルにとって捕食者回避の場となる隠れ家(水草)が存在する実験条件下では、小型サイズのアメリカザリガニに対しては幼生の生存率が統計学的に有意に増加する効果が認められたものの、中型・大型サイズのアメリカザリガニと同居させた実験では、隠れ家なしの条件下と比べて幼生の生存率は有意に異なりませんでした。
以上の結果は、各地で確認されているカエル類の地域絶滅や個体数減少の一因が、アメリカザリガニによる卵や幼生に対する捕食の影響にあることを強く示唆するものであり、希少カエル類の保全においてアメリカザリガニの侵入防止や駆除対策が不可欠となることを示しています。
<詳しい研究内容について>
アメリカザリガニはカエル類の卵や幼生を捕食する!~条件付特定外来生物に指定された本種の駆除の必要性を新たな視点から指摘~