日本全国で「市の花」が多様化している―制定傾向から見る地方自治体の自然観の変化―
◆発表のポイント
- 生物や生態系サービスに対する地方自治体の認識を解明することを目的に、日本各地で制定されている「市の花」の制定傾向を解析しました。
- 市の花は近年多様化しており、その背景として近年になるほど各市が地域的文脈(地域に根差した価値)を持つ花を選定している傾向が見られました。
- 地域固有の社会-生態システムや生物文化多様性への理解が地方自治体に浸透していくことが期待されます。
東京大学大学院農学生命科学研究科の都築洋一助教、東京都立大学理学部生命科学科の大崎晴菜特別研究員、国立遺伝学研究所の川口也和子特任研究員、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の勝原光希助教をはじめとする研究グループは、日本各地の「市の花」を自治体ホームページから調べ、制定された年との関連を解析することで、市の花が近年になるほど多様化していることを明らかにしました。また、近年になるほど市内の自生種・固有種や特産品・観光資源など、地域に根差した価値を持つ花が制定されている傾向が見られました。各市が自身の地域社会において固有の価値を持つ花を重視する中で、他市とは異なる花を選ぶようになり、その結果日本全体で市の花が多様になっていると考えられます。本研究は生物多様性や生態系サービスに対する地方自治体の認識を評価した点で新規性があり、個々の地域が独自に育んできた社会と生態系の関連への理解がさらに浸透することが期待されます。
<詳しい研究内容について>
日本全国で「市の花」が多様化している―制定傾向から見る地方自治体の自然観の変化―