誕生直後の宇宙の姿、衛星観測でどう捉えるか
◆発表のポイント
- 宇宙の熱いビックバンの前の姿を観測するためには、従来よりも1桁以上優れた精度でビックバンの残光の偏光を全天で観測する必要があります。
- 本研究では、独自に開発した高速シミュレーターFalconsによって、世界で初めて観測パラメーターを多次元空間で探索し、偏光測定誤差が最小になる観測手法を見つけました。
- この研究結果は、宇宙誕生直後の姿を探る将来の人工衛星計画において重要な設計指針を与えます。
岡山大学大学院自然科学研究科博士後期課程3年の髙瀬祐介大学院生(日本学術振興会特別研究員)、学術研究院環境生命自然科学学域の石野宏和教授、イタリア国際高等研究学校(SISSA)のLéo Vacher研究員、Guillaume Patanchon研究員(ILANCE, CNRS, Université Paris Cité, 東大)、Ludovic Montier研究員(仏, IRAP)らの国際共同研究グループは、宇宙創成の謎を探る衛星観測手段において、測定誤差を最小化する手法を発見しました。
宇宙の熱いビックバンは、その前の極短時間で起こったインフレーションと呼ばれる宇宙空間の大膨張によって発生したと考えられており、その証拠を見つけるには、ビックバンの残光にあたる宇宙マイクロ波背景放射の偏光を従来よりも1桁以上優れた精度で測定しなければなりません。その際に、装置性能の不定性に由来する誤差を抑制するために、観測パラメーターを多次元空間で最適化する必要があります。今回、独自に高速シミュレーターFalconsを開発し、その最適解を初めて見つけることに成功しました。
今回の成果は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)が推進する宇宙望遠鏡計画「LiteBIRD」をはじめとする将来の偏光精密観測に重要な設計指針を与えるもので、12月12日、イタリアの宇宙論・素粒子物理学雑誌「Journal of Cosmology and Astroparticle Physics」に掲載されました。
<詳しい研究内容について>
誕生直後の宇宙の姿、衛星観測でどう捉えるか