統合ゲノム育種学
現在の世界では、人口増加のみならず気候変動や環境破壊さらには食の安全といった社会的需要に対応した新しい作物の開発が求められています。今世紀になって急速に発展した生物工学や情報科学は育種現場においても導入が進み、今後は有用な遺伝子や農業形質を多様な遺伝資源から見出して品種開発につなげるパイプラインの開発が重要となります。私たちはこのような取り組みを加速させる育種技術の開発に取り組んでいます。
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多様なイネ遺伝資源が持つ有用農業形質の探索と活用
複数品種の積み上げ交雑からなる多系交雑集団を作出し、新しい遺伝子の探索やこれまでにない変異を生み出す育種集団としての可能性を検証しています。またアジアとアフリカの栽培イネの雑種4倍体のゲノム解析を通じて遠縁種間の倍数性育種の実現を目指しています。
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動原体改変による半数体の作出
半数体は倍加半数体による育種年限の短期化に利用できますが、半数体が得られる種は限られています。シロイヌナズナやトウモロコシでは、動原体の機能を部分的に失わせた系統と野生型系統を交配すると野生型系統由来の染色体をもつ半数体ができることが報告されました。私たちはこれまでの基礎研究で得られた結果を活かし、これらの種で用いられた方法を簡便化することにより多くの種で利用可能な半数体作出系を開発しています。
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バイオインフォマティクスと統計遺伝学に基づく高効率迅速育種法の開発
大規模な環境変動や人口増加に対応するために、迅速で効率的な作物育種法の開発が必要とされています。しかし従来の育種法では、複数回に渡る交配と形質調査を繰り返すため、時間がかかってしまいます。そこで、これまで蓄積されてきた遺伝学や作物学などにおける様々なデータとゲノム情報を活用し、育種プロセスを短縮する手法の開発を目指しています。