構造生物学
遺伝、代謝、シグナル伝達、認知や記憶、光合成などのすべての生命現象はタンパク質が担っています。タンパク質を細胞から取り出し、クライオ電子顕微鏡や放射光のX線を用いてタンパク質の立体構造を原子のレベルで視て、タンパク質の働きを本質的に理解することをめざします。またタンパク質の構造的な知見を戦略的に改変・応用して、人工光合成触媒のデザインや安定多収の作物などの新しい価値を創出することをめざします。
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光合成膜タンパク質の構造ダイナミクスに関する研究
光合成は,植物や藻類が行う光エネルギーを化学のエネルギーに変換する反応であり,ほぼ全ての生物の生存を支えています。光合成では光化学系IIおよび光化学系Iと呼ばれる巨大なタンパク質複合体がそれぞれ光エネルギーを吸収して効率よく利用しています。光化学系IIは水から電子と水素イオンを取り出して酸素を放出する反応を行います。地球上至る所に存在する水分子は安定で、これを酸化(分解)するのは容易なことではありません。光化学系IIの水分解反応を触媒しているのがマンガンクラスターとよばれる触媒部分です。マンガンクラスターではSi状態サイクル(i=0-4)と呼ばれる5つの周期的な中間体状態を遷移しS3→S4→S0の段階で酸素分子を発生しています。このとき水分子は水素イオンと電子と酸素分子に分解されることになります。私たちは光化学系IIの結晶とX線自由電子レーザーを用いて、光化学系IIのマンガンクラスターのリアルタイムでの構造変化を追跡して水分解・酸素発生の反応機構を明らかにすることをめざしています。
タンパク質の構造解析で、生命の神秘を解き明かす
1000億分の1メートルの精度で初めて見えた、光合成の精緻な仕組み