植物遺伝生理解析学
生命の生存に必要な地球の大気環境は、植物の光合成で水から酸素を発生して化学エネルギーに変換し、二酸化炭素を有機物に変換することで保たれています。光合成は細胞の葉緑体で行われ、精巧な仕組みでその恒常性を保持しています。例えば植物は、強すぎる光や日々刻々と変化する光環境にうまく適応しながら、障害を最小限に抑える巧みな仕組みで光合成能を維持しています。私達のグループでは、光合成と葉緑体の分化・機能維持に関わる基本作用を分子細胞レベルで明らかにし、作物の生産性向上や品種改良に役立てる研究を進めています。
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植物が様々な光環境に適応して生育するために葉緑体が持っている制御機能について研究しています。特に老化葉でも光合成能が持続されるステイグリーン現象、光合成のエネルギー転換反応の足場となるチラコイド膜の維持・修復に関わる新規タンパク質複合体、細胞内共生に由来する葉緑体DNAの維持と分解について研究をモデル植物から作物まで使って展開しています。
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澱粉は植物が光合成産物として合成するグルコースの多量体です。澱粉は人類のエネルギー源である主食であると同時に、広く工業製品にも用いられています。澱粉は細胞内で澱粉粒と呼ばれる粒子を形成します。澱粉粒の形は作物種によって特徴的な形を示し、その物性も異なります。私は澱粉粒の形が決定される仕組みを解明すると同時に、これまでに無い澱粉特性を持つ新しい澱粉作物の開発を行なっています。
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葉緑体に存在する集光アンテナタンパク質は、植物が光合成に用いる光エネルギーを効率的に集める巨大タンパク質複合体です。このタンパク質複合体がどのように高効率に集光を達成しているのかを複合体を構成するタンパク質の同定や翻訳後修飾解析、複合体全体の立体構造解析などの実験手法を用いて研究しています。
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変動する光環境下に応じて、植物は葉緑体内部の酸化還元レベルを厳密に制御しています。葉緑体内の酸化還元反応は光合成の電子伝達反応に直接影響を与え、効率的な光合成反応に寄与しています。私たちは、葉緑体内部の酸化還元状態を制御する新規のタンパク質を発見し、植物がいかに変動する光環境に適応しているのかを調べています。