アメリカザリガニの知られざる繁殖生態を解明!~条件付特定外来生物に指定されたばかりの本種の効率的な防除の応用に期待

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アメリカザリガニの知られざる繁殖生態を解明!~条件付特定外来生物に指定されたばかりの本種の効率的な防除の応用に期待

◆発表のポイント

  • アメリカザリガニは、2023年6月に環境省と農林水産省によって「条件付特定外来生物」に指定されました。効率的に防除を進めていくためには、繁殖生態に関する知見が必要となりますが、意外にも不明な点が多いのが実情でした。
  • 岡山県内のアメリカザリガニが定着した池で、1年間にわたり毎月、野外調査を継続的に実施した結果、抱卵メスは7月下旬から10月にかけて出現することが分かりました。また、10月初旬から翌年2月中旬にかけて、孵化したばかりの稚仔を抱えたメスが継続的に確認されました。
  • アメリカザリガニの成熟個体の形態には、繁殖可能時期のForm Iと繁殖できない時期のForm IIがありますが、成熟オスの第3・4歩脚に見られる小さな突起(鍵爪:Hook)のサイズがForm I・IIで有意に異なることを初めて確認しました。
  • 本研究で明らかとなった知見を踏まえて防除方法を検討すれば、絶滅危惧種を含む在来生物に対し深刻な被害を与えているアメリカザリガニの防除を、効率的に進めることが可能になると期待されます。

 岡山大学大学院環境生命科学研究科博士後期課程大学院生(当時)のQuang-Tuong Luongさん(応用生態学)、学術研究院環境生命自然科学学域(工)の中田和義教授(保全生態学)と勝原光希助教(植物生態学)らの研究グループは、アメリカザリガニの繁殖生態に関する新知見を明らかにしました。本研究の成果は、2023年10月31日に米国の国際学術誌「Journal of Crustacean Biology」の電子版に掲載されました。
 日本において本種は、親しみある身近な生き物として認識されがちですが、近年までに在来生物に対するさまざまな悪影響が国内外で明らかとなっています。このため本種は、2023年6月に環境省と農林水産省によって「条件付特定外来生物」に指定されました。本種の防除は国内外で進められていますが、効率的に防除を進めていくためには、「いつ、産卵するのか?」などの繁殖生態に関する知見が必要となります。しかし、本種の繁殖生態や生活史は、意外にも不明な点が多いのが実情でした。
 岡山県内の本種が定着した池で、1年間にわたり毎月、野外調査を継続的に実施した結果、抱卵メスは7月下旬から10月にかけて出現することが分かりました。したがって、西日本において本種は、夏から秋にかけて繁殖期を迎えることが明らかとなりました。
 また、10月初旬から翌年2月中旬にかけて、孵化したばかりの稚仔を抱えたメスが継続的に確認されました。秋の遅い時期に産卵したメスは卵を抱えたまま冬を迎えることになりますが、驚くことに、冬季の低水温下でも卵の発生は進行し続けて、孵化することが判明しました。
 本種の成熟個体の形態には、繁殖可能時期のForm Iと繁殖できない時期のForm IIがあり、Form IとIIを脱皮ごとに交互に繰り返す「型周期(Form alternation)」が見られることが知られています。今回の研究で、本種の成熟オスの第3・4歩脚に見られる小さな突起(鍵爪:Hook)のサイズがForm I・IIで有意に異なることが初めて確認されました。繁殖可能時期のForm Iで発達する鍵爪は、交尾の際にメスをしっかりと固定するのに役立つと考えられます。
 本種のメスは、1個体あたり数百個の卵を産みます。本研究で明らかとなった知見を踏まえて防除方法を検討すれば、絶滅危惧種を含む在来生物に対し深刻な被害を与えている本種の防除を、効率的に進めることが可能になると期待されます。

<詳しい研究内容について>
アメリカザリガニの知られざる繁殖生態を解明!~条件付特定外来生物に指定されたばかりの本種の効率的な防除の応用に期待~

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