ついにできた!常温・可視光でアルカンから水素を取り出す触媒を開発
◆発表のポイント
- 地球沸騰化に歯止めをかけるために、化石燃料を燃やしてエネルギーを得る現状のエネルギー生産システムから、水素エネルギーを活用する循環型水素社会への転換が望まれている。
- 炭素-水素結合を多く含む、液体状の有機分子を水素貯蔵体と見なし、有機分子から高いエネルギー効率で水素を取り出す触媒は、水素社会を実現する基盤技術になる。
- 可視光エネルギーを用いて、環状アルカン1分子から、最大限の3分子の水素を常温で取り出せる、世界初の触媒を開発した。
概要
東京大学 大学院薬学系研究科 金井 求 教授・三ツ沼 治信 助教と、岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域 山方 啓 教授、神戸大学 分子フォトサイエンス研究センター レーザー分子光科学研究部門 小堀 康博 教授の研究グループは共同で、可視光エネルギーを利用して、常温で環状アルカンから最大限の3分子の水素を取り出す触媒の開発に成功しました。
本研究では、光触媒、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl)触媒、チオリン酸(TPA)触媒、コバルト触媒の四種類の触媒をシステムとして複合することが成功の鍵となりました。
環状アルカンから水素取り出し反応を進行させる従来の方法は、300度近い高温や紫外光の照射が必要であったり、1分子の水素しか取り出せなかったり、収率が非常に低かったり、といった課題を抱えていました。本成果は、ガソリンスタンドなどの現状の社会基盤設備で容易に提供可能な、液体で軽量な有機分子を水素貯蔵体として、高いエネルギー効率で水素を取り出せる技術の開発の第一歩になることが期待されます。
<詳しい研究内容について>
ついにできた!常温・可視光でアルカンから水素を取り出す触媒を開発