腸内分泌ホルモンによる摂食嗜好性の調節〜タンパク質の摂りすぎを防ぐメカニズムと重要性〜

RESEARCH &
PROJECT

腸内分泌ホルモンによる摂食嗜好性の調節〜タンパク質の摂りすぎを防ぐメカニズムと重要性〜

◆本件のポイント

  • 生物には特定の栄養素の摂りすぎを防ぐシステムが備わっている
  • モデル生物キイロショウジョウバエの腸内分泌細胞の一部が高タンパク質食に反応することを発見した
  • その腸内分泌細胞はCCHa1というホルモンを産生して摂食量を調節していた
  • CCHa1は腸へと伸びる神経に作用して高タンパク質食の過剰な摂食を防いでいた
  • CCHa1の作用を失うと、高タンパク質食を過剰に摂取し栄養バランスの破綻に至ることが判明した
  • 腸ホルモンによる摂食制御が特定の栄養素に対する食欲を調節していることが示唆された

 群馬大学生体調節研究所(群馬県前橋市)の吉成祐人助教、西村隆史教授と筑波大学生存ダイナミクス研究センターの丹羽隆介教授、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の吉井大志教授らの研究グループは、モデル生物であるキイロショウジョウバエを用いて、過剰なタンパク質摂食を防ぐ仕組みの一端を解明しました。
 生物は摂取した栄養素を体内で感知し、足りない栄養素を補うように食物を選択することで栄養バランスを保っています。このためには、栄養素のバランスを感知するシステムと、その情報を食物の選択へと出力するシステムの双方が必要であると考えられますが、その仕組みについては不透明でした。
 今回、研究チームは、キイロショウジョウバエの腸内分泌細胞から分泌される腸内分泌ホルモンCCHa1がタンパク質に対する食欲を抑制することを明らかにしました(図1)。腸内分泌細胞から分泌されたCCHa1は、腸へと伸びる神経により受け取られ、味覚神経へと情報を伝達することによりタンパク質の過剰な摂取を防ぐことが判明しました。さらに、CCHa1シグナルが正常に機能しないと、キイロショウジョウバエは高タンパク質食※4を過剰に摂取してしまい、有害なアンモニアを体内に蓄積してしまうことが明らかになりました。
 本研究成果により、摂食障害や偏食といった疾患に腸内分泌ホルモンが関与する可能性が示唆され、今後腸内分泌ホルモンをターゲットとした治療が期待されます。
研究成果は2024年12月30日、英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。

<詳しい研究内容について>
腸内分泌ホルモンによる摂食嗜好性の調節〜タンパク質の摂りすぎを防ぐメカニズムと重要性〜

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