世界初!線虫(C. elegans)の体内構造と脂質分子分布を対応づける質量分析イメージング手法を開発

RESEARCH &
PROJECT

世界初!線虫(C. elegans)の体内構造と脂質分子分布を対応づける質量分析イメージング手法を開発

◆発表のポイント

  • 線虫の内部構造を保ったまま、脂質の三次元分布を可視化する質量分析法を確立しました。
  • 10 µmの連続切片と画像位置合わせで、器官ごとの脂質分布が明らかになりました。
  • 質量分子分析と染色法を併用して、線虫体内での脂質分布を相互から確認することに成功しました。
  • 脂質代謝や老化研究への応用が期待され、創薬や疾患評価にも貢献する成果です。

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の藤原正澄教授と大学院自然科学研究科博士後期課程のサラ・マンディッチ(Sara Mandić)大学院生は、甲南大学の太田茜特任研究准教授、久原篤教授、オランダ・マーストリヒト大学のRon M. A. Heeren教授、Michiel Vandenbosch博士、Bryn Flinder博士の研究グループと共同で、線虫(C. elegans)の体内構造を保持したまま連続切片を取得し、脂質分布を三次元的に可視化する質量分析イメージング手法を開発しました。
 この技術の開発は、単なる分析手法の進歩にとどまらず、脂質代謝の空間的理解を飛躍的に高める重要な成果です。線虫は脂質代謝経路やその調節因子が哺乳類と高い類似性を持つことから、肥満や糖尿病、神経変性疾患などのヒト疾患のモデルとしても広く用いられています。本技術を用いることで、これらの疾患に関連する脂質の動態を個体レベルで詳細に追跡することが可能となり、病態の早期診断や創薬に向けた新たなバイオマーカー探索への貢献が期待されます。さらに、脂質に関する基礎研究に加え、薬剤投与による脂質変化の評価や、老化・ストレス・栄養状態の変化による生体反応の解析にも応用が可能です。本研究成果は、モデル生物を用いた分子機能の可視化と定量化に新たな扉を開くものであり、将来的には医療・創薬・環境科学における幅広い応用展開が期待されます。
 この研究成果は、7月9日(日本時間)、「Scientific Reports」に掲載されました。

<詳しい研究内容について>
世界初!線虫(C. elegans)の体内構造と脂質分子分布を対応づける質量分析イメージング手法を開発

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