セルロースナノファイバー(CNF)で気候変動に立ち向かう~CNFは土壌の保水性を高め渇水時の農業生産をサポートする~
◆発表のポイント
- 気候変動のもとでは、渇水が予想されている地域が世界中にあります。東南アジアの一部地域でも灌漑水の不足が予想されており、世界の食糧生産基地としては大変な打撃になります。
- 植物由来の新材料・セルロースナノファイバー(CNF)を調べると保水性に優れ、植物が利用可能な領域の水分を多量に貯留し、植物の発芽と成長を助けることがわかりました。
- 土壌に対してわずか1%のCNFの施用で、灌漑水が50%に減っても100%灌漑と同等の植物生長が期待され、将来の水不足に備えられることがわかりました。
学術研究院環境生命自然科学学域の森 也寸志教授と大学院環境生命科学研究科博士後期課程2024年修了生のNgo Thuy Anさんは、植物由来の新材料・セルロースナノファイバー(CNF)を使うと土壌の保水性が高まり、渇水で灌漑水が減少しても、健全な植物生長を促せることを発見しました。
これらの研究成果は、TOP10%国際学会誌である「Environmental Technology & Innovation(2024年8月)」および「Catena(2025年6月30日)」に掲載されました。とくに初めの論文は、論文の注目度を表す被引用数がTOP 5%であり、世界的に注目されていることがわかります。最近掲載された論文も同様に注目されることが期待されます。
CNFによる土壌環境改善のうち、今回我々は、植物が実際に利用できる水に注目し、わずか1%のCNF施用で、発芽率を改善させること、植物が利用可能な水量が増加すること、灌漑水が50%に減少しても100%灌漑と同等の植物生長を促せること、灌漑水あたりの生長が増大することを明らかにした点が注目できます。
気候変動のもとでは、極端な豪雨や渇水が発生します。渇水が懸念される地域は世界中に多数あり、自然に還る植物由来の新材料で土壌環境を改善できることは大きな進展で、21世紀の食料生産に大きな福音と言えます。
<詳しい研究内容について>
セルロースナノファイバー(CNF)で気候変動に立ち向かう~CNFは土壌の保水性を高め渇水時の農業生産をサポートする~